パワーバンドの恐怖と快感

今も鮮明に思い出すのは先輩の乗っていたスズキGT380(通称サンパチ)です。あのバイクで2サイクルエンジンの強烈なパワーと加速の洗礼を受けまして、それが恐怖と快感に変わった日のことは今でも忘れることができません。

レッドバロン 世界の名車シリーズVol.37 GT380

ちょっと乗ってごらん

2歳年上の先輩と私の同級生達が集まってバイクを見せ合っていたところ、GT380に乗っている先輩が言いました。

「俺のバイクちょっと乗ってごらん?面白いよ。」

「え?いいんですか!ちょっと借ります。」

先輩から軽い感じでススメられ、軽い感じで乗り出した私。その時はあんな恐怖を味わうことになるとは思いもよりませんでした。

キック一発エンジンをかけ、走り出した私。

「あれ?こんなもん?思ったよりパワーがないじゃんこのバイク。380ccあるのにこんなもん?」

低回転では何だかモソモソしているエンジン。全然元気がないのです。

モソモソしながらも徐々にタコメーターの針が上がって行きます。私は完全にナメていました。

豹変!恐怖の加速に突入

7000rpmを過ぎた頃でしょうか?その恐怖はいきなりやってきました。

ンガーーー!!!

突然の急加速に身体が置いていかれそうになり、ハンドルから手が離れそうになり、脳みそが頭蓋骨から後ろに出てしまったかの様な感覚に襲われました。

ナメてかかっていた私はアクセルを全開にしていたので尚更フルパワーで急加速!

何が起こっているのか理解するのに時間がかかってしまいました。時間にすればほんの2〜3秒だったと思いますが、時が止まってしまったかの様な錯覚に陥り、一瞬気を失っていたかと思えるほどの空白な時間!

そうこうするうちに前方に左コーナーが!!!

我に返った私はアクセルを戻しフルブレーキ!得意な左コーナーだったのが幸いして突っ込んでクラッシュする事は避ける事が出来たのでした。

あのまあと0.5秒でも空白の時間が続いていたら大クラッシュしていました。恐ろしや恐ろしや。

引きつった顔で帰ってきた私を見て「ニヤニヤ」していた先輩の顔が思い出されます。

今思えば確信犯ですな。面白がっていたな。

その後、どの位経過したかは忘れましたが、友人の一人がコーナーを曲がりきれずに藪に突っ込んだと聞きました。幸い怪我は無かった様で何よりでしたが、先輩は絶対面白がってましたね。

最初に注意を与えてくれよ。

あれからすでに40年近く経ちましたが、GT380の恐怖の加速の事は忘れる事ができません。鮮明に思い出せます。

あの猛烈な加速を味わいたくて何度か先輩のGT380を借りましたね。癖になってしまいました。

その後、先輩は家を離れ会う事もなくなってしまいましたが、置いてけぼりになって玄関横で錆びだらけになっているGT380を見るたび可哀想に思っていた事を思い出します。

いつの間にか無くなってしまったので解体屋さんに回収されちゃったんだろうな。

レッドバロンで笑う

新型MT-03ABSの契約の時、記念にGT380の置物をもらいました。「世界の名車シリーズVol.37」レッドバロンでバイクを購入した人にプレゼントしている物です。

レッドバロン 世界の名車シリーズVol.37 GT380

思わず言ってしまいました。

「うわー!懐かしすぎる!サンパチじゃん。」

店長さん

「乗っていたんですか?」

サンパチは自分のバイクではありませんでしたが、上記の思い出を店長さんと居合わせた店員さんに話しました。

身振り手振りで話しながら、口でエンジン音の「ンガーーー!!!」と、ハンドルから手が離れそうになっているジェスチャーを交え、パワーバンドに入った恐怖の瞬間を再現して見せました。

ゲラゲラゲラ〜。

面白おかしく話したのでみんなに笑ってもらえましたが、冷静に考えると生きててよかった。と思えるほど強烈な思い出です。

初めての2サイクルバイクで同じ様な恐怖を味わった事がある方、私の気持ちわかってくれますよね。